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解雇・退職勧奨・雇止めの法律相談Ⅰ 最新青林法律相談54


著者・編者浅井 隆

発行元青林書院

発行年月日2025(令和7)年11月10日


書籍説明

■解説

労働契約の終了における「有効」・「無効」判断の分岐点とは
●最新裁判例の中から判断が分かれた参考事例を抽出!
●労働契約終了の判断において重視された「事実」を分析!
●「有効」判断の獲得に役立つ「実務上のポイント」を詳解!


はしがき
 本書は、労働契約が終了する主な形態3つ、すなわち解雇(懲戒解雇も含む
)、退職勧奨(合意退職)、雇止めに関し、最新の裁判例を基に、どういう場合
に有効となり、どういう場合に無効となるかを解説した本です。さまざまなケ
ースがあるので、Ⅰ巻とⅡ巻の2分冊となっています。Ⅰ巻が普通解雇、Ⅱ巻
が懲戒解雇、退職勧奨(合意退職)、雇止めに関するものです。
 労働契約は労働債務と賃金支払債務の双務有償契約ですが、その契約が有効
に終了しないと紛争となります。例えば、解雇が無効だと労働契約は有効に終
了せず、労働者から賃金を将来に亘って請求し続けられます。有期労働契約の
使用者側からの期間終了の通知(雇止め)にしても、更新につき合理的期待の
ある有期労働契約では、上記解雇と同様の紛争となります。退職勧奨にしても
、有効な合意解約が成立しなければ、同様です。
 たしかに、解雇にしても、雇止めにしても、それぞれの有効要件は法律に規
定されていますが(普通解雇では、労働契約法第16条の解雇権濫用法理、懲
戒解雇では、さらに同法第15条の懲戒権濫用法理、雇止めでは、同法第19
条の雇止め法理、なお、退職勧奨では、民法第95条の錯誤、同第96条の詐
欺・強迫の規定等)、規定の内容は抽象的で判断が難しいものです。
 それでも、労働契約を有効に終了させることは、労働紛争の予防のため、万
一労働紛争となったときでも早期の合理的解決のため、不可欠なことです。
 ただ、どのようにしたら労働契約を有効に終了させることが出来るかです。
これは、労働紛争につき裁判所がどういう事実を重視してどのように判断をし
たかが参考になります。その裁判例は、最新のものであればあるだけ参考にな
ります。
 そこで、本書では、最新の裁判例を参考に、労働契約の終了の主な形態であ
る解雇(懲戒解雇も含む)、退職勧奨(合意退職)、雇止めにつき、出来るだ
け多くのケースを取り上げ、使用者側が勝っているケースと敗けているケース
をそれぞれ分析し、どのケースではどういう事実が重視されるかを抽出するこ
とで、どのようにしたら(どのような事実を積み上げたら)、解雇(懲戒解雇
も含む)、退職勧奨(合意退職)、雇止めが有効となるかを、さまざまなケー
ス毎に解説することとしました。
 もっとも、こういう解説には何人もの優秀な弁護士が必要です。そこで、西
頭英明先生、柏戸夏子先生、友永隆太先生、荒井徹先生といった優秀な弁護士
に分担してもらいました。
 本書が、使用者がその雇用する労働者との労働契約を終了させるとき、労働
紛争を回避(予防、発生しても早期の合理的解決)する一助となれば幸甚です。
 最後に、本書の刊行に向けてご尽力いただいた青林書院編集部の鈴木広範氏
に心からお礼を申し上げます。
 令和7(2025)年10月
第一芙蓉法律事務所     
執筆者代表 弁護士 浅井 隆


編著者
浅井  隆(あさい たかし)
弁護士(第一東京弁護士会)
第一芙蓉法律事務所
〒100-6012 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング12階
TEL 03-3519-7070 FAX 03-3519-7077

執筆者
浅井  隆
上掲
【執筆担当】第1章「普通解雇」Q 1 ~Q 9 、Q26~Q40

柏戸 夏子(かしわど なつこ)
弁護士(第一東京弁護士会)
第一芙蓉法律事務所
【執筆担当】第1章「普通解雇」Q10~Q24

荒井  徹(あらい てつ)
弁護士(第一東京弁護士会)
第一芙蓉法律事務所
【執筆担当】第1章「普通解雇」Q25
(執筆順)



 
 

■書籍内容

第1章 普通解雇
Q 1■ 解雇等の主張・立証責任
 当社では、正社員に問題社員がいるので退職させたいのですが、解雇は、民法上は
 自由にできると聞いているので、その問題社員に退職を求め、退職しないときは解
 雇したいのですが、問題はないでしょうか。
Q 2■ 労働契約終了通知への対応
 当社は、採用したXを、試用期間を経過して本採用としたのですが、労働契約を継
 続することはできないと考え、30日予告を内容とする「労働契約終了通知書」を渡
 しました。
 Xはこれを解雇なのか、解雇だとして懲戒解雇なのか普通解雇なのか説明を求めて
 きました。どう対応したらよいのでしょうか。
Q 3■ 当該契約が労働契約か否かの判断① ― 労働者性の判断
 当社は、アロマテラピー店・飲食店等を経営目的とする会社ですが、その店員とし
 て働く契約をXとし、その際、時給の説明はせず、ただ、働く中で毎月渡す明細に
 、「1200」「68.0h」「81600」と記載し、加えて、飲食する客から注文されるたび
 にいくらかの割合の金銭を支払っていました。
 当社としては、Xとの契約を労働契約とは考えていませんでした。ただ、支払いは
 、月末締めで翌月15日前後に手渡していました。
 その中で、当社は、Xとの契約を一方的に打ち切ったところ、Xは労働契約である
 と主張してきました。どう対応したらよいでしょうか。
Q 4■ 当該契約が労働契約か否かの判断② ― 取締役就任者
 当社はいわゆる中小企業なのですが、当社で平成16(2004)年2月4日雇用され、平
 成28(2016)年4月15日取締役に就任後、平成31(2019)年2月28日取締役に再任さ
 れなかったXが、平成28(2016)年4月15日取締役に就任以降でも雇用契約は存続
 しており、平成31(2019)年2月28日取締役に再任されなかったとしても、雇用契
 約のほうはいまだ存続しているとして、当社に対し賃金請求をしてきています。
 当社では、取締役就任によって雇用契約は消滅したと考えているのですが、間違
 っているでしょうか。
Q 5■ 当該契約が取締役身分(委任契約)だけの場合の解任
 当社は、取締役に選任した者を解任したいと判断した場合、どういう点に注意を
 したらよいでしょうか。
Q 6■ 労働契約の使用者性の判断① ― 権利能力なき社団
 我がY政党には、法人格のあるY政党の下に、県組織の埼玉県委員会、県内の地区
 組織の西部地区委員会がありました。この西部地区委員会がXを採用し、Xに働い
 てもらい賃金も支払っていました。
 その後、Xは、西部地区委員会に退職届を提出しました。ところが、Xは、退職届
 を強制的に書かされたとして法人格のあるY政党を被告にして地位確認等の訴訟を
 提起してきました。
 Y政党(法人)は、Xの請求を受けなければならないでしょうか。
Q 7■ 労働契約の使用者性の判断② ― 事業譲渡の場合
 当社は、セキュリティに関する機器の開発及び販売等を目的とする会社ですが、事
 業のうち、ネットワークセキュリティ事業の販売部門を新設分割の方法で譲渡(そ
 れで設立されたのがY社)しました。
 ところが、当社は業績不振となり破産申立てをし、それに伴い従業員を全員解雇し
 ました。他方、Y社は、存続しています。
 この場合、解雇された従業員がY社に対し、〔A〕法人格否認の法理、ないし〔B〕 
 黙示の(労働契約を含む事業の)承継の主張をすることで、Y社との雇用を主張し
 てきました。
 認められる可能性はどれだけあるのでしょうか。
Q 8■ 解雇撤回後の出勤命令拒否
 当社では、職場離脱行為を繰り返してきたXに対し、令和4(2022)年4月4日、同
 年5月3日をもって解雇する旨通知したのですが、Xが代理人弁護士を通じて解雇
 無効の主張をしてきたため、解雇紛争を回避すべく、5月10日、解雇を撤回するの
 で12日より本社へ出勤するよう命令し、ただ、上記非違行為につき、懲戒手続を
 開始する旨の通知をしました。
 ところが、Xは、復帰するに際し、条件を付けてきてこの条件を満たさない限り復
 帰しない、として出勤命令を拒否しています。
 現在の事態において、どのように対応したらよいでしょうか。
Q 9■ 解雇を撤回しても会社が(不法行為に基づく)損害賠償義務を負うとき
 当社(Y社)は、平成17(2005)年4月雇用したXを平成29(2017)年7月西日本担
 当マネージャーにしたところ、他方で同年₉月入社の東日本担当のマネージャーBを
 平成30(2018)年4月にナショナル(日本)マネージャー、平成31(2019)年1月に
 ゼネラルマネージャーにすると、XはBからパワハラを受けていると主張しました
 。これに対し当社は、Xを令和2(2020)年11月13日解雇しました。
 するとXは、令和3(2021)年3月10日解雇を無効として訴訟提起したので、当社は
 、解雇紛争を回避すべく、同年11月30日解雇を撤回したうえ、翌12月1日より自宅
 待機命令を発令し、現在(翌令和4(2022)年11月8日)まで続けています。ただ、
 賃金は解雇撤回日以降現在まで支払っています。
 Xは、当該解雇までと撤回後のBのパワハラ及び自宅待機状態について損害賠償請
 求してきています。支払わなければならないでしょうか。
Q10■ 試用期間①― 新卒社員の本採用拒否
 2か月前に入社したばかりの新卒正社員採用の新入社員について、現在試用期間中
 ですが、何度注意指導をしても基本的なミスを繰り返しています。注意に対して反
 発はなく、メモを取るなどして努力はしているようですが、一向に仕事は覚えず、
 ミスも減らない状況で困っています。内勤ということもあり、現時点では顧客に対
 して迷惑をかけることにはなっていませんが、他部署からはクレームがくるなども
 あって社内では支障も出ています。このような状況では、他部署に異動させること
 も難しいので、試用期間満了時に解雇(本採用拒否)をしたいと考えています。
 試用期間中の解雇は、通常よりも解雇しやすいと聞いていますし、解雇は可能と考
 えてよいでしょうか。
Q11■ 試用期間② ― 試用期間延長
 最近入社した試用期間中の社員について、今すぐにでも解雇を検討しなければなら
 ないほどではありませんが、パフォーマンスが芳しくありません。当社の就業規則
 には、試用期間延長についての定めはありませんが、本採用をするには不安があり
 、念のため試用期間を延長してもう少し様子を見たいと考えています。
 試用期間延長後もパフォーマンスに改善がないようであれば、解雇を検討せざるを
 得ないと考えていますが、仮に解雇をする場合、試用期間中の解雇(留保解約権の
 行使)として、本採用後の普通解雇に比べれば、緩やかな判断になると理解してよ
 いでしょうか。
Q12■ 試用期間③ ― 試用期間途中での解雇(無効)
 1週間前に入社し、現在試用期間中の社員について、新入社員ということで業務負
 荷を軽くしているにもかかわらず、経験がないことを踏まえても考えられない単純
 なミスを連発しており、フォローをしなければならない周囲にも少なからずしわ寄
 せがいっている状況です。
 経験が浅く不慣れであることを考慮しても、この業務への適性がないと判断せざる
 を得ず、他に担当してもらえる業務もありません。
 試用期間満了まで見ても、結果は変わらないと思いますので、重大な事故等が起き
る前に、できるだけ早いうちに解雇したいのですが、可能でしょうか。
Q13■ 試用期間④ ― 試用期間途中での解雇(有効)
 現在試用期間中の労働者について、送料の取扱いや価格表示の誤記載、注文書の同
 封漏れなどの初歩的なミスを多発し、指導担当者が都度注意をしても一向に改善し
 ません。当該労働者のミスにより、一部の顧客からは注文が来なくなるなどの損害
 も出ています。そのうえ、先日、上長が当該労働者と個別面談を行い、業務上の注
 意指導をしたところ、パワハラに該当するから止めるよう訴えてきました。しかし
 、上長の注意指導は至極真っ当なもので、パワハラに該当するような余地はありま
 せん。
 試用期間満了は1か月後ですが、このような状況では改善の見込みもなく、雇い続
 けても損害が広がるばかりです。今すぐ見切りをつけ、試用期間満了をもって解雇
 通知をすることはリスクが高いでしょうか。
Q14■ 即戦力採用① ― 総論⑴
 当社では、半年程度前に、調剤薬局での勤務を前提に、薬剤師の資格者を即戦力と
 して中途採用しました。採用応募の際に提出された履歴書や面接では、調剤薬局で
 の経験もあり、患者対応も得意であるとのことでしたので、それらを踏まえて採用
 しました。
 しかし、当該社員に対し、入社後実際に調剤業務等を任せたところ、細かい文字が
 見えないので時間がかかるといわれ、患者対応を任せても患者への配慮に欠ける発
 言が多く、複数の患者から苦情を受けている状況です。
 当社は、当該社員の入社₆か月後の試用期間満了日をもって、当該社員を試用期間
 解雇したいと考えていますが、可能でしょうか。
Q15■ 即戦力採用② ― 総論⑵
 当社では、半年程度前に、顧客に当社取扱商品を売り込んでもらうための営業担当
 者を、即戦力として中途採用しました。採用応募の際に提出された履歴書からは、
 営業経験が豊富であることがうかがえましたし、面接の際も以前に在籍していた会
 社に高い営業成績を残してきたという話もありましたので、当社においても同様に
 活躍してくれるであろうと期待しての採用でした。
 しかし、当該社員に対し、入社後実際に営業を任せてみたところ、営業成績は全く
 振るわず、入社₃か月経過しての営業成績はゼロ、その後多少よくなりましたが、期
 待していた数字には全く届いていません。
 当社としては、当該社員を解雇したいと考えていますが、解雇可否の検討にあたり
 何がポイントとなるでしょうか。
Q16■ 即戦力採用③ ― 即戦力採用者の解雇が有効とされた例
 数か月前に採用した社員について、履歴書に同業かつ募集ポジションでの経験が長
 い旨の記載があり、面接においても前職にて大きな業績を上げており、前職の経験
 を生かしてすぐにでも当社に貢献できる旨のアピールもありましたので、即戦力と
 して採用しました。
 しかし、いざ入社後に業務を任せると、基本的なミスを繰り返し、即戦力どころか
 、何度注意指導を繰り返しても改善がなく、平均的な水準にも達していません。
 当該社員を解雇することは可能でしょうか。
Q17■ 有期雇用者の期間途中での解雇① ― 総論
 先日、期間を₁年とする有期労働契約を締結し、入社した労働者について、顧客対応
 に関し業務上のミスがあったため、注意指導を行ったところ、猛抗議をしてきまし
 た。また、同労働者は、勤務シフトにおいて自己の都合を優先するよう要求したり、
 周囲に対しても攻撃的な言動を繰り返したりしており、職場環境を著しく悪化させ
 ています。
 契約期間満了まではまだ半年以上がありますが、これ以上は職場も耐えられないの
 で、すぐにでも解雇をしたいのですが、可能でしょうか。
Q18■ 有期雇用者の期間途中での解雇② ― 試用期間中での解雇
 期間1年の有期労働契約で採用した外国人のプロジェクトマネージャーについて、
 プロジェクトマネージャーのポジションは、仕事をするうえで日本語が必須である
 のですが、入社間もなく、日本語がほとんど使えないことが分かりました。
 当社のプロジェクトマネージャーには日本語能力が中級上位以上であることを採用
 条件としており、本人の話では、そのような能力があるということでしたので、採
 用に至った経緯があります。
 当該労働者は、現在₃か月の試用期間中であるところ、当社の就業規則上、試用期
 間中に当社社員として採用するにふさわしくないと判断した場合は、正式採用を見
 合わせることがある旨の定めがありますので、同定めに基づき、解雇したいと考え
 ています。
 無期労働契約において、試用期間中の解雇は通常の解雇より緩やかに判断されると
 聞きましたが、有期労働契約の場合も同様でしょうか。
Q19■ 勤務態度不良者の解雇① ― 総論
 当社において、業務命令違反に対し、業務命令に従うよう繰り返し指示し、懲戒処
 分を何度行っても一向に命令に応じない社員がいます。何度注意を繰り返しても一
 向に改善しないうえに反抗的な態度をとる状態で、普通解雇をしたいと考えていま
 すが、可能でしょうか。
Q20■ 勤務態度不良者の解雇② ― 業務命令違反
 当社において、かねてより取引先から問題視されていた労働者がいたのですが、こ
 の度、当該労働者が取引先社員に対して暴言を吐いたことを機に、当該労働者に対
 し、担当業務の変更を命じたところ、強く抵抗し、引継ぎも拒否をしています。
 業務命令違反というだけで解雇まですることは難しいでしょうか。
Q21■ 勤務態度不良者の解雇③ ― 事前の注意指導の必要性
 当社社員について、経費の不正請求/受給が発覚しました。具体的には、出張とは
 無関係の領収証を添付して出張時の懇親会の費用として請求したり、家族との旅行
 費用を出張費用として請求したりしていました。その他、社用車の不正な私的利用
 等も発覚しています。
 勤務態度が著しく不良として普通解雇をしたいと思いますが、過去に注意指導歴は
 ない場合、いきなりの解雇は難しいでしょうか。
Q22■ 勤務態度不良者の解雇④ ― 遅刻欠勤
 当社において、遅刻欠勤を繰り返す社員がいます。口頭で注意はしたものの、改善
 しないため、けん責の懲戒処分を科しましたが、その際に提出された始末書には、
 反省するつもりはない旨の記載がありました。同社員は、会議中に居眠りをする、
 周囲の社員に対して、配慮に欠けた言動を繰り返すなど、協調性にも問題がありま
 す。
 遅刻欠勤が多いことを理由に解雇することはできるでしょうか。
Q23■ 勤務態度不良者の解雇⑤ ― 無許可の兼業・副業
 当社は、就業規則において、兼業・副業を許可制にしていますが、この度、ある社
 員が、無許可で兼業をしており、それにより多額の報酬を得ていたうえ、兼業先の
 業務を、就業時間内に行っていたことが発覚しました。
 当社では、無許可の兼業・副業は解雇事由にも定められています。当該社員を解雇
 したいと考えておりますが、可能でしょうか、
Q24■ 勤務態度不良者の解雇⑥ ― ポイントの不正利用
 当社では、業務上の接待等のために用意する土産品を社員の個人名義で一括購入し
 てもらい、支払いは当社名義の口座から振り込む方法で行っています。商品を購入
 すると購入額に応じて₁ポイント₁円で利用できるポイント還元があるため、担当者
 に対しては、貯まったポイントは次回購入時に利用するよう指示していました。し
 かし、この度、担当者が当該ポイントを勝手に利用して、私物購入に充てていたこ
 とが発覚しました。
 当該社員のことは、もはや信用できませんし、解雇したいと考えていますが、問題
 はあるでしょうか。
Q25■ 勤務態度不良者の解雇⑦ ― パフォーマンス不良
 当社は、営業目標を設定しており、営業売上げが年間300万円を達成できなかった
 場合には、普通解雇すると定めていました。今般、Xが売上目標を達成できなかっ
 たので、Xを普通解雇しようとしたところ、Xは売上げが上げられなかったのは景
 気の問題もあり、たった₁回基準を下回った程度では解雇は無効であると述べてい
 ます。
 解雇基準を明確にしていても、解雇は無効になってしまうのでしょうか。
Q26■ 会社のルール(規則)違反を理由とする解雇
 当社は、タクシー会社ですが、社内に労働組合があり、その代表であるXが、会社
 のルール(営業車両内に設置されたカメラは移動させないこと)を遵守するよう繰
 り返し注意されても違反し、そのうえ、助手席座面に置いたタブレットの画像を見
 ながら営業車両を運転した等のため、普通解雇をしました。
 Xは、当該解雇を組合嫌悪によるもので解雇権の濫用で無効と主張しています。
 当社の解雇の効力が否定されることはありますか。
Q27■ 協調性欠如等を理由とする解雇
 当社には協調性が欠如した従業員Xがいるのですが、XはX自身、上司から嫌がら
 せを受けたとして「職場いじめについての報告」と題する書面を会社に提出しまし
 た。しかし、その内容を確認しても、嫌がらせの日時等が特定されていない抽象的
 なもので、また、別の従業員の行為と混同している可能性のあるものでした。その
 上司に確認しましたが、否定したため、これをXの妄想と結論付け、その旨回答す
 るとともに、退職勧奨をしました。
 しかし、Xはこれに応じなかったため、当社は協調性の欠如等を理由に普通解雇し
 ましたが、Xはこの解雇を争ってきました。
 どのような展開が予想されるでしょうか。
Q28■ 解雇と不当労働行為
 当社には、労働組合があります。組合員に対し、解雇したり人事異動(配転・出
 向)命令を発令する場合、どういった点に注意したらよいでしょうか。
Q29■ 虚偽情報のリーク・虚偽の告発を理由とした解雇
 当社の従業員Xが、週刊誌に当社の事業にかかわる虚偽情報を提供したうえ、捜
 査機関に当社が補助金を不正に受給している疑いがある旨告発しました。
 当社では、このXの行為を理由にXを解雇したいと考えています。解雇が有効と
 なるためには、どういう点に留意したほうがよいのでしょうか。
Q30■ 精神科系の病気で業務に耐えられないことを理由とした解雇
 当社には精神科系の病気で業務に耐えられない従業員Xがおり、そのため長期にわ
 たって欠勤が続いています。ちなみに、当社には私傷病休職制度はありません。
 そこで、Xを精神科系の病気で業務に耐えられないことを理由に解雇したいと考え
 ています。この解雇が有効となるためには、どういう点に留意したほうがよいので
 しょうか。
Q31■ 脳出血を発症し後遺症が残った労働者に対する休職期間満了による退職扱いの
   有効性
 本法人は大学を設置し経営する学校法人ですが、教授Xが平成28(2016)年2月脳
 出血を発症し、私傷病休職期間を経て同期間満了においても回復しなかったことか
 ら、同期間満了日である令和₂(2020)年₃月₃日をもってXを解任したところ、Xは
 これに反発し、本法人が合理的配慮を提供していれば復職は可能であったのにそれ
 をしなかったとして、争ってきました。
 どのように対応したらよいのでしょうか。
Q32■ 過重労働の強要等に基づく精神疾患発症と解雇
 当社は、電気通信の技術員としてXを雇用したところ、長時間労働が原因で気分
 (感情)傷害を発症したと主張したため、私傷病休職制度を適用し休職期間1年6か
 月間療養してもらいましたが、回復しなかったため、休職期間満了による自然退職
 を通知しました。
 ところが、Xは、長期休務は業務に起因するもので、私傷病休職期間満了に伴って
 自然退職とするのは労基法19条に反すると主張し納得しません。
 どうしたらよいでしょうか。
Q33■ 業務上か否かの具体的事案
 休務が業務上であれば、労基法19条の解雇制限が適用され、解雇はできない。他方
 、休務が業務上でなければ、同条の解雇制限が適用されることなく私傷病休職制度
 があればそれを適用し、休職期間満了で自然退職となる、というのは分かるのです
 が、具体的事案でどのように判断すればよいのでしょうか。
Q34■ 休職期間満了時に一度復職を認めた後の、休職事由該当性を理由とする
   退職扱いの有効性
 当社では、中途採用の即戦力として雇用した従業員Xが、2年ほど勤務した後、体調
 不良になったことから、私傷病休職制度を適用しましたが、休職期間満了間近にな
 って復職可能の診断書を提出してきたことから、いったん復職を認めたのですが、
 復職後も体調が良くなく、出勤はするのですが即戦力として期待するパフォーマン
 スが全く発揮できず、そのうえ、復職後₂週間ほどして(よって、休職期間は満了
 していました)出勤できなくなりました。
 私傷病休職の規定に則って、自然退職の取扱いをしたいのですが、問題ないでしょ
 うか。
Q35■ 法人の解散に伴う解雇の判断
 当社は、唯一ある工場で化学製品を製造する株式会社ですが、当該工場が安全性を
 確保したうえでの収益性の点で存続が難しいことから、工場の操業を止め閉鎖し、
 全従業員を解雇し、法人を解散したいと考えています。これは、いわゆる整理解雇
 となり、難しいでしょうか。
Q36■ 整理解雇① ― 人員削減の単位
 特定のビジネスを担ってもらうため労働契約を締結した従業員への整理解雇につい
 ては、当該労働契約の特色に応じ、整理解雇の四要素を適用判断してもらえないの
 でしょうか。
Q37■ 整理解雇② ― 小規模企業における整理解雇
 私ども小規模企業で余剰人員が発生する際、いわゆる整理解雇法理が適用されると
 解雇が難しく経営再建が手遅れになる心配があるのですが、小規模企業における余
 剰人員の整理解雇も、大企業の整理解雇と同様に規制されるのでしょうか。
Q38■ 整理解雇③ ― 異常事態発生に対応するための整理解雇
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大のような異常事態が発生し、それに伴って業
 績が悪化する中、人員削減に着手し、整理解雇に踏み切る場合、どのようなことに
 留意すべきでしょうか。
Q39■ 整理解雇④ ― 整理解雇事件のリスクの特色と処理の仕方
 当社はマンションの内装工事を行う会社で、Xをその内装工事の施工管理とマンシ
 ョン引渡し後のメンテナンス管理のため雇用しましたが、Xにはその後、専らメン
 テ管理業務に従事させました。そうこうしている中、新型コロナウイルス感染拡大
 で経営不振になったため事業を縮小しXを整理解雇しました。
 Xは労働審判の申立てをし、整理解雇を無効とする審判が言い渡され確定しまし
 た。その後、当社はXと退職交渉をしましたが、まとまらなかったため、改めてX
 を整理解雇しました。
 すると今度はXから(整理解雇を無効とする)訴訟が提起されました。どのような
 対応をするのがよいでしょうか。
Q40■ 解雇後の就労意思の喪失・損益相殺
 当社がXを解雇したところ、Xは別の会社との間で有期労働契約を締結しました。
 その後Xは、当社に対し、解雇無効の訴訟を提起してきました。
 しかし、Xは、別の会社に雇用されているので、当社としては、損益相殺の主張だ
 けでなく、就労意思喪失の主張もしたいと考えています。認められる可能性はどれ
 くらいあるでしょうか。

 キーワード索引(第Ⅰ巻)
 判例索引(第Ⅰ巻)

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