
同一労働同一賃金の実務と書式
書籍説明
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■解説
同一労働同一賃金問題に取り組む実務家必携の書
●同一労働同一賃金問題の考え方,対応例,書式例について,
裁判例を踏まえ分かりやすく解説。
●基本給・賞与・退職金・私傷病休職等各種手当について,
裁判例・ガイドラインの考え方,就業規則の改定例,正社員と
非正規社員の待遇差を説明する際のヒントを示した。
●判例・裁判例を多数収録し,判断の要点を分かりやすく整理。
同一労働同一賃金問題について,令和2年10月に5件の最高裁判決が出され,
令和3年4月から中小企業にも同一労働同一賃金に関するパートタイム・有期
雇用労働法が施行され,いよいよ各企業で同一労働同一賃金問題への対応が急
務となりました。
この問題は,一言でいうと,通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の
労働条件の相違が不合理といえる状況にないかを労働条件ごとに個別に分析し
,不合理といえる状況がある場合には,これを是正するということです。ただ
,よりかみ砕いて考えると,本書181頁以下で解説したとおり,比較対照する
[1]自社の通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者それぞれの区分,①職
務の内容,②人材活用の仕組,③その他の事情の状況を確認,整理する必要が
ありますし,[2]各労働条件の相違,趣旨を確認,言語化し,さらには労働
条件の相違が不合理かどうかを裁判例等に照らし分析し,不合理と思われるも
のについては是正する必要があります。この作業は,非常にオーダーメイド色
が強く,言語化にも難しさがあります。例えば,一言で契約社員といっても,
期間の定めがある以外,業務内容,異動,役職就任などにおいて正社員とまっ
たく相違がない企業もあれば,3年ないし5年といった更新の上限を定め,長
期雇用を予定していない企業もあります。①職務の内容,②人材活用の仕組,
③その他の事情についても,本書181頁から183頁で示したとおり,採用,教育
・研修,評価制度,キャリア,業績目標の有無など視点は多岐にわたり,人事
担当者でも状況を理解していなかったり,同じ企業の中でも部門によって状況
が異なることもあります。労働条件の趣旨についても,実態に合っている必要
があるものや,会社固有のものもあり,例えば同じ慶弔金でも,一般的には親
族等の慶弔につき金銭を支給するもので役職や企業への貢献度は関係ないです
が,役職に応じて慶弔金の金額が異なり企業への貢献度に応じた手当となって
いたこともあります。さらに,有期雇用労働者を雇用する意義についても,単
に安くて雇止めできる労働力と考えるだけでは,採用に苦戦するケースもあり
ますし,通常の労働者との間の労働条件の相違が不合理と判断される懸念もあ
り,臨時的な雇用と整理するのか,限定正社員,正社員への登用を前提とする
のかなど,見直しの時期が来ているといえます。このように,同一労働同一賃
金問題は,企業の働き方の抜本的な見直しの問題でもあるといえます。他方で
,ダイバーシティ(多様性)の広がりの中で家族の在り方が変化したり,ジョ
ブ型雇用の広がりもみられ,家族手当,子供手当,住宅手当といった属人的な
手当を見直す動きもみられます。また,COVID-19禍以降,休業やオンライン化
,テレワークの急速な普及を経て,改めて企業は人であるとの実感を得,有為
な人材を確保・定着するための労働条件の改革に取り組む企業もみられます。
そのため,今まさに,同一労働同一賃金問題を契機として,各企業で働き方を
抜本的かつ前向きに見直す良いタイミングともいえます。
このように,同一労働同一賃金問題は,対応を間違えれば紛争の火種になりま
すが,この問題の検討を通じて,社員の区分,労働条件を見直したり,労働条
件に対する納得感や長く働いてもらうための制度作りの契機,短時間・有期契
約労働者を雇用する意義を考え直す契機になり,前向きに捉えることもできま
す。私が関与した企業でも,契約社員の大規模な正社員化に踏み切った企業や
,手当類を整理し,一部の手当は廃止したものの,別の手当は短時間・有期雇
用労働者にも支給するようにし,納得感のある整理をするなど,前向きな取り
組みの契機になったと捉えています。
本書では,このような分析,規定化,前向きな取り組みの指針を提供できれば
と思い,労働法を専門とする法律事務所で経験を積んだ執筆陣とともに,同一
労働同一賃金問題の考え方の解説,労働条件ごとの一般的な知識,考え方,裁
判例,実務対応・規程改定例,待遇差の説明のヒントを示し,同一労働同一賃
金問題に関するノウハウ,書式をちりばめました。本書が同一労働同一賃金問
題に悩んでいる企業担当者,弁護士や社会保険労務士,税理士等の専門家にと
って,紛争予防や紛争解決の一助になれば幸いです。
最後に,青林書院編集部の留守秀彦氏には,本書の刊行にあたり都度丁寧なご
意見やご提案をいただき,おかげさまで本書がより読者にとって懇切丁寧な書
籍になったと考えております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
令和3年6月
弁護士 村田 浩一
編者
村田 浩一:弁護士(根本法律事務所)
執筆者
村田 浩一(上掲)
瀬戸 賀司:弁護士(杜若経営法律事務所)
鈴木 芳信:弁護士(熊隼人法律事務所)
下平 学:弁護士(恵比寿パートナーズ法律事務所)
梅本茉里子:弁護士(杜若経営法律事務所)
■書籍内容
第1章 日本版同一労働同一賃金の解説
1 同一労働同一賃金の基本的な考え方
⑴「日本版」同一労働同一賃金とは何か/⑵ガイドラインとは何か
2 「均等待遇」及び「均衡待遇」の考え方
⑴均等待遇」「均衡待遇」の適用場面について/⑵改正前後の規定/⑶「均衡待遇」
について⑷「均等待遇」について/⑸均等待遇に関する実務対応
3 待遇の説明義務について
⑴条文/⑵改正により変更となった点/⑶留意点
第2章 各手当の問題点・実務対応
総 論
1 はじめに
2 最高裁判決の考え方
⑴基本給,賞与,退職金A/⑵職務の内容や人材活用の仕組に関連する労働条件B/
⑶職務の内容や人材活用の仕組との関連性が薄い労働条件C/⑷対応の指針
各 論
1 基本給
⑴概要/⑵ガイドライン/⑶裁判例/⑷考え方,実務対応/⑸待遇差の説明のヒント
2 賞 与
⑴概要/⑵ガイドライン/⑶裁判例/⑷考え方,実務対応/⑸待遇差の説明のヒント
/⑹規程例
3 各種手当
⑴役職手当/⑵資格手当/⑶特殊作業手当,安全手当/⑷特殊勤務手当/⑸精勤手当
,皆勤手当/⑹テレワーク手当,在宅勤務手当/⑺休業手当/⑻割増手当,固定残業
代/⑼通勤手当/⑽出張手当/⑾食事手当/⑿家族手当,扶養手当/⒀住宅手当/⒁
別居手当,単身赴任手当/⒂地域手当
4 福利厚生,休暇,教育訓練
⑴特別休暇/⑵慶弔金/⑶健康診断,勤務免除/⑷私傷病休職,病気休暇/⑸年次有
給休暇/⑹教育訓練/⑺福利厚生施設/⑻社宅,寮
5 退職金
第3章 定年後再雇用者の問題
1 定年後再雇用とは
2 定年後再雇用の特殊性
▪▪▪COLUMN高年齢雇用継続給付の縮小
3 各労働条件の不合理性判断
⑴基本給
⑵賞 与
⑶住宅手当・家族手当
4 定年後再雇用者の労務管理のポイント
⑴定年前と①職務内容,②人材活用の仕組の規定と運用に差を設ける
⑵労使協議の重要性
第4章 同一労働同一賃金問題を乗り切る実務対応
1 自社の状況を把握する
2 不合理と判断されるおそれのある労働条件の洗い出し
3 是正の方法
⑴労働条件の相違を正当化する根拠を整える(手当の趣旨の整理,名称変更等)/
⑵短時間・有期雇用労働者の労働条件を引き上げる/⑶通常の労働者の労働条件を
引き下げる(例:正社員の住宅手当を廃止する)/⑷労働条件の抜本的な改革/⑸
⑴~⑷の複合型
第5章 派遣社員の同一労働同一賃金
1 労働者派遣法の改正
⑴改正法の基本的な考え方/⑵改正の主要なポイント
2 派遣労働者の待遇決定方法
3 派遣先均等・均衡方式について
⑴派遣先均等・均衡方式の概要/⑵派遣先での比較対象労働者の選定/⑶派遣先の
情報提供の方法・内容/⑷「均等待遇」「均衡待遇」の判断/⑸待遇差の是正
4 労使協定方式について
⑴労使協定方式の概要/⑵労使協定の記載事項/⑶労使協定で定める賃金の決定方
法/⑷賃金以外の待遇について/⑸労使協定の締結・周知/⑹派遣先の教育訓練・
福利厚生施設に関する対応
5 派遣労働者に対する説明義務
⑴派遣労働者として雇用しようとするときの説明/⑵雇入れ時の説明/⑶労働者派
遣をしようとするときの明示及び説明/⑷不合理な待遇差を解消するために講ずる
措置の説明/⑸派遣労働者から求めがあった場合の説明/⑹派遣労働者から求めが
ない場合における対応
6 派遣先等の派遣料金に関する配慮義務
第6章 裁判例の概要
1 ヤマト運輸(賞与)事件(仙台地判平29・3・30労判1158号18頁)
2 日本郵便(休職)事件238
3 学究社(定年後再雇用)事件(東京地立川支判平30・1・29労判1176号5頁)
4 医療法人A会事件(新潟地判平30・3・15労経速2347号36頁)
5 日本郵便(佐賀)事件
6 長澤運輸事件
7 九水運輸商事事件
8 五島育英会事件
9 日本ビューホテル(定年後再雇用)事件
(新潟地判平30・3・15労経速2347号36頁)
10 学校法人産業医科大学事件
11 北日本放送(定年後再雇用)事件
(富山地判平30・12・19労経速2374号18頁)
12 ハマキョウレックス事件
13 大阪医科薬科大学事件
14 メトロコマース事件
15 学校法人X事件(京都地判平31・2・28労経速2376号3頁)
16 井関松山製造所事件
17 井関松山ファクトリー事件
18 日本郵便(東京)事件
19 日本郵便(大阪)事件
20 学校法人中央学院事件
21 社会福祉法人青い鳥事件(横浜地判令2・2・13労判1222号38頁)
22 トーカロ事件(東京地判令2・5・20労経速2429号26頁)
23 アートコーポレーションほか事件(横浜地判令2・6・25労判1230号36頁)
■事項索引/■判例索引

