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貸金業と過払金の半世紀


著者・編者阿部 高明阿部 芳久

発行元青林書院

発行年月日2018(平成30)年01月25日


書籍説明

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■解説

消費者金融業転落の軌跡!!

消費者金融業者を「貸金専業者」と「貸金兼業者」に大別、
かれらが最終的にクレジットカード業に収束していった歴史的
背景と、それに決定的な働きをした最高裁及び種々の裁判所に
おける重要判決例の要点をそれぞれ詳細にまとめた稀覯書!!


まえがき
 本書の執筆に至った経緯(骨子)を述べ、まえがきとする。  
著者の法律事務所(以下「著者事務所」)は、約半世紀前に設立され、一般民事商
事のほか、専門分野の「独占禁止法」と「クレジットカード法」の実務を取り扱っ
ていたが、直近の四半世紀は後者にのみ特化した。その理由は、次のとおりである。
著者事務所の代表は、「独占禁止法」の専門書を公にし、その実務に従事していた
が、平成17年法改正により導入された「リニエンシーに基づく減免申請」は、まさ
に「密告」そのものであった。強烈な生理的嫌悪感を禁じ得ず、独占禁止法とその
実務に対する興味は全く消え失せた。
筆者事務所は、長年、クレジットカード業(以下「カード業」)の事業者団体及び
企業(以下「カード会社」)の法律顧問として、貸金業法と割賦販売法を主要根拠
法とする「クレジットカード法」についての法律相談や訴訟事件に従事してきた。
カード会社の担当者からは日々、カード業の現場で実際に発生した個別かつ微細な
質問や問合せがなされてきた。しかるにその際、弁護士実務の観点から見た場合、
参照する概説書は実際にほとんど役に立たなかった。このため著者事務所は、正確
かつ迅速な回答を可能とすべく、独自の調査や関係先に対する必要な照会等を日常
的に繰り返してきた。その結果、著者事務所には、クレジットカード法の実務的ノ
ウハウが蓄積された。そんな中で平成10年以降、あるカード会社の依頼に基づき、
いわゆる多重債務者からの過払金返還請求訴訟(以下「過払金訴訟」)に対処せざ
るを得なくなった。カード会社の代理人である以上、当然ながら、依頼者のカード
会社の正当な主張を貫徹し、多重債務者側の根拠のない請求を悉く排斥することに
傾注してきたが、その際、次の三つの視点を念頭に対処してきた。
 一つは、「倫理的価値判断」である。
多くの原告(ないし代理人)は、単純に善と悪を峻別し、債務者の原告は被害者で
すべて善人、被告の貸金業者は高利を得ていた悪人と断じ、過払金の返還請求は社
会正義の実現である、と考えていた様子である。その結果、被告の貸金業者の従業
員に罵詈雑言を浴びせる原告代理人もまま見受けられた。ちなみに、カード会社の
従業員の多くはそれなりの大学を卒業し、家族や親類に多重債務者など皆無の健全
な家庭を築き、真っ当な社会人として通常の市民生活を送っている。
しかしながら、この点は判決の是非とは無関係であり、単に当事者(ないしその代
理人)の人間性の問題に過ぎず、仮に議論しても、キリスト教徒とイスラム教徒間
の議論と同様、全く噛み合わず無意味なため、すべて黙殺してきた。
 二つは、「事実認定の正確性」である。
ほとんどの原告(ないし代理人)が、本書で識別しているサラ金業者を代表とする
「貸金専業者」と信販会社を代表とする「貸金兼業者」を一緒くたにし、両者の貸
金業務の内容がすべて同一であると誤認した上での各主張を繰り返してきた。
しかしながら、貸金の利率や取引開始時期が異なれば請求金額も当然、異なってく
るとおり、事実が異なれば結論も異なることはいうまでもない。この観点から、あ
らゆる貸金業者の社歴その他の歴史的事実、事業内容、貸金取引の実態等を全面的
に調査し、依頼者であるカード会社の貸金取引の内容との相違点を詳細に識別し、
有効な反論に努めてきた。
 三つは、「法的解釈論の見極め」である。
原告(ないし代理人)は、最高裁判例に限らず、単なる簡裁レヴェルの判決であっ
ても、それが債務者側に有利な判示であれば、直ちにそれに拡大解釈ないし類推解
釈を行い、他の訴訟に平然と援用してくることが多かった。
しかしながら、判示の意義、すなわち判決の有効射程は極めて限定的なものであり、
要件事実に限らず、たとえそれが間接事実であっても重要な点が異なれば、結論の
法的解釈も異なってくるのが自明の理である。このため、前記の事実認定と同様、
問題とされている判示の基礎となる要件事実ないし重要な間接事実の相違点を正確
かつ明確に識別する作業を幾度となく繰り返し、実施してきた。
以上述べた過払金訴訟への対応に基づき、著者事務所には、利息制限法・出資法・
貸金業法に対する実務知識のほか、これに関する最高裁判例及び高裁・地裁の生き
た判決例が順次、蓄えられていった。著者事務所の業務の変遷の過程で幸いだった
ことは、学生時代からクレジットカードに興味を抱いていた共同代表の阿部高明弁
護士が、クレジットカード法の根幹である貸金業法と割賦販売法の研究に多くの時
間を割き、その結果を相当量の未発表原稿として作成していたことである。当該研
究に基づく著者両名の協議の結果、「クレジットカード法の全貌を体系的に明確に
する著作物」を公にする企画が創出され、遂に平成28年9月から順次、その執筆に
取り掛かった。
 本書は、上記企画の第一弾であるが、消費者金融業者を貸金専業者と貸金兼業者
に大別し、その相違点を明確にし、平家物語の盛者必衰の理に従い消費者金融業の
巨人が劇的に転落し、最終的にはクレジットカード業に収束していった歴史的事実
と、それに決定的な働きをした最高裁判例の概要及び特定の貸金兼業者に対する判
決例の要点を明らかにしたものであるが、少なくとも国会図書館が存続する限り、
「資料」として永久に残存されてしかるべきものと確信している。
 本書は多くの方々の御助力の賜物であり、各人のお名前を個々に表記することは
割愛するが、各位への深甚の謝意を表してまえがきを締める。
  
 平成29年(2017年)12月吉日
 代官山の自宅にて東京タワーとスカイツリーを眺めつつ
 著者代表 阿部 芳久

著 者
阿部 高明:弁護士(阿部東京法律事務所共同代表)
阿部 芳久:弁護士(阿部東京法律事務所)


■書籍内容

目 次
  
第1章 貸金業者の栄枯盛衰序
第1節 貸金業の開拓者(貸金専業者)
Ⅰ 消費者金融(サラ金)
Ⅱ 商工ローン
Ⅲ 「枯・衰」の原因
第2節 貸金業の追随者(貸金兼業者等)
Ⅰ 信販会社
Ⅱ 月賦百貨店(月賦小売業)
Ⅲ クレジットカード会社
Ⅳ クレジットカード業への収束
第3節 貸金業の新規参入者――銀行
Ⅰ 銀行と貸金業者(業種の別異性)に対する法規制の峻別
Ⅱ 従前の貸金業(消費者金融)の担い手
Ⅲ 銀行の貸金業(消費者金融)への進出
Ⅳ 都市銀行と中小・地方銀行

第2章 貸金規制の変遷
第1節 旧「利息制限法」等による規制(戦前・戦後~昭和28年)
Ⅰ 貸金業者の規制
Ⅱ 金融機関(普通銀行)の規制
第2節 「利息制限法」と「出資法」による規制(昭和29年~昭和57年)
Ⅰ 貸金業者の規制
Ⅱ 信販業者の規制
Ⅲ 金融機関(銀行)の規制
第3節 「貸金業規制法」と改正「出資法」による規制(昭和58年~平成11年)
Ⅰ 「貸金業規制法」の制定
  (昭和58年(1983年)5月13日法律第32号/同年11月1日施行)
Ⅱ 「出資法」の改正
  (昭和58年(1983年)5月13日法律第32号・第33号/同年11月1日施行)
第4節 「利息制限法・出資法・貸金業規制法」による規制(平成12年~18年)
Ⅰ 「商工ローン問題」に対する平成11年法改正
  (平成11年(1999年)12月17日法律第155号/平成12年6月1日施行)
Ⅱ 「ヤミ金問題」に対する平成15年法改正
  (平成15年(2003年)8月1日法律第136号/平成16年1月1日施行)
第5節 改正「利息制限法・出資法・貸金業法(名称変更)」
    による規制(平成19年以降)
Ⅰ 「利息制限法」の改正
Ⅱ 「出資法」の改正
Ⅲ 「貸金業法」の改正(名称も変更)
第6節 貸金規制の今後の問題点
Ⅰ 銀行カードローンによる「高利貸し」の是正
Ⅱ ヤミ金撲滅の具体策――「高利貸金業」の容認

第3章 過払金訴訟の最高裁判決
第1節 利息制限法の解釈論
Ⅰ 過払金の「元本の充当」の可否――「№1最判・№2最判」
Ⅱ 過払金の返還請求の可否――「№5最判・№6最判」
Ⅲ 利率の特約がない場合(利息の利率の約定あり)の遅延損害
  金の利率――「№3最判・№4最判」
Ⅳ ①弁済充当の順序の特約がある場合の充当関係、
  ②連帯債務者による制限超過部分の求償の可否――「№4最判」
Ⅴ 借入残高が増減した場合の利息制限法1条1項の「元本」の額
  ――「№38最判・№48最判」
Ⅵ みなし利息――「№11最判・№12最判・№13最判」
Ⅶ 過払金の「他の貸金債務への充当」
Ⅷ 貸金契約上の地位(過払金返還債務)の移転・承継
第2節 不当利得(民法703条)
Ⅰ 過払金の消滅時効
Ⅱ 利息・損害賠償(民法704条)
Ⅲ 悪意の受益者の認定
第3節 不法行為(民法709条)
Ⅰ 貸主からの訴訟の提起
Ⅱ 取引履歴の非開示
Ⅲ 過払金の支払請求・受領
第4節 貸金業規制法43条の「みなし弁済」
Ⅰ 法43条の趣旨
Ⅱ 「任意に支払った」の意味
Ⅲ 法17条書面
Ⅳ 法18条書面
Ⅴ 最高裁によるみなし弁済の全否定  

第4章 貸金兼業者に対する過払金訴訟の判決例

第1節 A社の主業
Ⅰ サラ金との業態の相違(物販先行・キャッシング兼業)
Ⅱ 物販債務と貸金債務の別についての立証責任
第2節 貸金業の内容
Ⅰ 小口消費者ローンの開始
Ⅱ A社とサラ金業者との相違
Ⅲ 貸金についての事実認定
第3節 発行カードの意義
Ⅰ カードの必要性
Ⅱ カードの機能
Ⅲ カード発行と貸金取引の関係
第4節 取引履歴(業務帳簿)
Ⅰ 制定当初の「貸金業の規制等に関する法律」
  (以下「貸金業規制法」という)の規制
Ⅱ 平成11年改正貸金業規制法(平成12年施行)の規制
Ⅲ 判決の事実認定
Ⅳ 貸金業法の業務帳簿と商業帳簿(会計帳簿)
Ⅴ 実施してきた推定計算
第5節 不当利得⑴(民法703条)
Ⅰ 過払金の主張立証責任
Ⅱ 根拠のない過払金の算出手法
Ⅲ 過払金の物販債務への非充当
第6節 不当利得⑵(民法704条)
Ⅰ 過払利息(前段)
Ⅱ 損害賠償(後段)――「弁護士費用」
第7節 不法行為(民法709条)
Ⅰ 「平成17年7月19日最高裁第三小法廷判決」の意義
Ⅱ 取引履歴
Ⅲ 「架空請求」――不法行為の主張
Ⅳ その他の損害賠償請求
第8節 その他の判示
Ⅰ 過払金の供託の有効性
Ⅱ 民事調停法17条決定
第9節 文書提出命令申立事件の決定
第10節 訴訟審理上の問題点
Ⅰ 訴訟当事者としての「調査義務」等の不履行
Ⅱ 釈明権(民事訴訟法149条)の誤解

巻末付録
資料Ⅰ 貸金業者数の長期的な推移
資料Ⅱ 貸付上限金利と出資法上限金利の推移
資料Ⅲ クレジットカード会社収束一覧表
資料Ⅳ クレジット関係団体の推移(㈱シー・アイ・シー作成)
資料Ⅴ 最高裁判決一覧表(№1~№48)
資料Ⅵ 地裁・高裁判決一覧表(№1~№60)
資料Ⅶ 文書提出命令申立事件の決定一覧表
  
事項索引

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