
公衆衛生法──感染症編
書籍説明
ポストコロナの感染症対策への、確かな法的視座を提供
依然として出口の見えない新型コロナ禍は、公衆衛生を維持することの重要性を改めて社会に突きつけました。公衆衛生維持の鍵は〈自由と安全〉のバランス。ワクチンや行動制限、そして営業規制などの感染症対策は多かれ少なかれ「自由」を制限するがゆえに、とりわけ憲法上の権利への配慮が不可欠であり、適切な運用が求められます。「感染症編」となる本書は、一連の感染症対策の基本法となる感染症法や新型インフルエンザ特措法、検疫法、予防接種法などを中心に、沿革および基本知識から実際の運用のあり方まで体系的に解説。日本における「公衆衛生法学」は、ここから始まります。
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第1章 公衆衛生史──国家と公衆衛生の密な関係
第2章 公衆衛生法学──公衆衛生法とはどのような分野か
第3章 感染症予防──予防対策と水際対策
第4章 感染症対策の基本的枠組──基本法としての感染症法
第5章 新型インフルエンザ対策──特措法による状況に応じた対応
第6章 ワクチン対応──予防接種法とその変遷
【資料】感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)[感染症法](令和3年改正後)
【事項索引/判例索引】
【詳細目次】
はじめに
第1章 公衆衛生史――国家と公衆衛生の密な関係
1 公衆衛生の歴史
(1)「衛生」の由来
(2)ペスト
(3)公衆衛生対策の萌芽
(4)公衆衛生学
(5)最初の公衆衛生法
2 公衆衛生の担い手
(1)行政機関と裁判所
(2)ポリスパワー
3 公衆衛生に対する全体的取組み――日本の例
4 公衆衛生と憲法――なぜ国家は公衆衛生維持の責務を担うのか
(1)国家の公衆衛生維持の責務
(2)社会契約論と公衆衛生
(3)功利主義と公衆衛生
(4)公共財と公衆衛生
(5)健康権
第2章 公衆衛生法学――公衆衛生法とはどのような分野か
1 日本国憲法における公衆衛生
(1)公衆衛生の維持と公衆衛生の向上
(2)日本国憲法と健康権
2 公衆衛生法
(1)公衆衛生法学の定義
(2)公衆衛生法学のポイント
コラム① 感染症対策における監視
3 公衆衛生対策の弊害――人権侵害の過去
(1)優生思想との結合
(2)ハンセン病問題
(3)強制不妊の問題
(4)公衆衛生対策と司法審査
4 公衆衛生法のアプローチ
(1)衛生行政の概念
(2)公衆衛生に関連する法分野
第3章 感染症予防――予防対策と水際対策
1 感染症予防
(1)予防対策
(2)基本指針・予防計画・基本方針・医療計画
2 水際対策としての検疫
(1)検疫
(2)検疫法と検疫の概略
3 検疫法
(1)検疫法の目的と対象
(2)検疫開始前
(3)検疫の実施
(4)検疫措置
(5)隔離
(6)停留
(7)協力要請
(8)検疫証等の交付
(9)その他の衛生業務
(10)新型コロナ禍における検疫法
4 入管法
(1)上陸拒否
(2)通報義務
コラム② ウィズコロナか、ゼロコロナか
第4章 感染症対策の基本的枠組――基本法としての感染症法
1 感染症法成立の背景
(1)従来の伝染病対策
(2)伝染病予防法
(3)戦時・戦後の感染症対策
(4)感染症法の制定
2 感染症法の概要
(1)人権尊重
(2)総合的な感染症対策
3 情報収集と公表
(1)医師等の届出
(2)積極的疫学調査
(3)新型コロナ禍における積極的疫学調査
(4)公表
4 医療体制の確保
(1)病床確保と人員確保
(2)病床確保と人員確保のハードル
5 感染症まん延時の対策①――就業制限と入院措置
(1)感染確認のための健康診断――健康診断の前置
(2)就業制限
(3)濃厚接触者の就業制限
(4)入院措置
(5)検体採取
(6)必要最小限の要求
6 感染症まん延時の対策②――消毒・水や建物の使用制限・交通制限・検体収去等
(1)消毒
(2)水や建物の使用制限
(3)交通制限
(4)検体収去
(5)必要最小限性
第5章 新型インフルエンザ対策――特措法による状況に応じた対応
1 制定経緯
(1)インフルエンザのパンデミック
(2)H1N1 インフルエンザの影響
2 新型インフル特措法の目的
(1)対策強化
(2)生命・健康と生活・経済の両立
(3)人権尊重
(4)法律が求める「必要最小限」の意味
3 対策プロセスの概要
(1)プロセス
(2)役割分担
(3)情報・対策・治療
(4)規制態様
4 全国的流行――第1段階
(1)発生段階――組織的準備と基本的対処方針の作成
(2)地方自治体との連携
(3)地方自治体の対策
(4)諸々の専門家組織
(5)専門家の役割と政府の役割
5 まん延防止等重点措置――第2段階
(1)重点措置の段階
(2)まん延防止事態の要件
(3)実際の判断基準
(4)重点措置
(5)強制力の問題
(6)対策不足?
6 緊急事態宣言――第3段階
(1)緊急事態宣言の要件
(2)期間や区域
(3)実際の判断基準
(4)具体的措置
7 「協力要請」と「措置時の要請」の異同
(1)2021年改正前
(2)2021年改正後
8 新型コロナ禍における自粛要請と営業の自由の問題
(1)補償をめぐる問題
(2)営業の自由の問題
(3)事実行為と委縮効果論
(4)休業要請の合法性・合憲性
(5)時短命令・休業命令
(6)グローバルダイニング訴訟――東京地裁判決
コラム③ 事業者にとってのコロナ保険?
9 新型コロナ禍におけるマスク着用の問題
(1)マスク着用の要請
(2)マスク着用要請の法的問題
(3)マスク着用と憲法上の権利の関係
コラム④ 孤の要請と個の要請
第6章 ワクチン対策――予防接種法とその変遷
1 予防接種制度
(1)1948年予防接種法による義務化
(2)予防接種禍の歴史
(3)強制接種の合憲性
2 新型コロナ禍のワクチン
(1)日本の対応
(2)ワクチン義務化の問題
3 間接的強制の諸問題
(1)ワクチンパスポート
(2)ワクチンハラスメント――私人間の問題
コラム⑤ ワクチンパスポートと体温チェックの違い
おわりに
【資料】感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)[感染症法](令和3年改正後)
【事項索引/判例索引】