
最新 不正競争防止法概説【上巻】
書籍説明
令和5年改正(法律第51号)に完全対応!!
不正競争防止法を【上・下】2巻で詳述!!
※下巻はこちら
■新旧の重要裁判例を数多く取り入れ,不正競争防止法の実務と理論を余す
ところなく解説した「決定版」!!
■上巻】では総論としての第1編「序論」,第2編「不正競争行為」のうち
2条1項1号~10号の内容を扱う!!
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は し が き
今般,令和5年法律第51号までの法改正を取り込んだ不正競争防止法の最
新の概説書として本書を刊行する運びとなった。しかし,本書は実質的には
青林書院からこれまで3回にわたり出版をしてきた小野昌延先生との共著『
新・不正競争防止法概説』の改訂版であり,さらにその源流をたどれば,小
野先生が1961年に有斐閣から公刊された『不正競争防止法概説』(以下これ
を『旧概説』という)にまで遡るであろう。
小野先生が2018年(平成30年)に逝去された後も,青林書院のご厚意とお
勧めにより,上記書籍は今日まで改訂を重ねることになった。
小野先生は,旧概説を執筆された1961年頃の状況について,「50年前には
,私の不正競争についての根本観念である『流通・消費に対する公害』を表
現しようとしても,『生産における企業災害』という言葉はあっても,『公
害』という言葉すらなかった,今日,重要視される消費者行政も,通産省の
『日用品課』が主管庁であった」(後掲ⅴ頁の『新・不正競争防止法(初版
)「はしがき」』より)と往時を懐古されている。しかし,今日では取引社
会の拡大に伴って,日々発生する不正競業類型を対象とする不正競争防止法
は,ほぼ毎年のように改正が行われ,関係する判例や論考も飛躍的に増加し
ている。
しかし,「流通・消費に対する公害」としての不正競争行為や不公正な取
引方法に対処するには,不正競争防止法のみでは不十分であり,独禁法,景
表法等の経済法や民法の契約法理や不法行為法等々のあらゆる分野にわたる
法規の総合的な連携が必要である。
筆者も,江口順一先生がよく口にされていた「市場における公正行動準則」
と位置付けられる法ないし法システムが必要であると考える。
しかし,このような法システムは徐々に形成されつつあるものの,明確に
その姿を成すに至ってはいない。
しがたって,まだ不正競争防止法が活躍できる余地が残されているようで
ある。
ところが,そう思って改訂作業に着手したものの,弁護士としての日常業
務や法科大学院での講義に時間を取られた上,種々の理由により改訂作業は
大幅に遅れた。
読者には,このような次第で本書が改訂(公刊)されたことをご理解いた
だき,執筆者の至らぬ点が多々あることをご寛恕いただきたい。
なお,本書の刊行にあたっては,ややもすれば滞りがちな改訂作業を叱咤
激励し,支援を続けてくださった青林書院顧問の宮根茂樹氏には心から御礼
を申し上げたい。
2025年(令和7年)2月
松村 信夫
著 者 紹 介
小 野 昌 延(おの しょうえん)
1953年 京都大学法学部卒業
1974年 特許庁・工業所有権審議会委員
1975年 日本工業所有権法学会常任理事
1978年 日本弁護士連合会・無体財産権制度委員会委員長
1982年 神戸大学法学部非常勤講師
1999年 日本商標協会会長
2018年 逝去
松 村 信 夫(まつむら のぶお)
1975年 同志社大学法学部法律学科卒業
2001年 日本弁護士連合会知的財産制度委員会(現知的財産センター)委員
2003年 特許庁工業所有権審議会臨時委員
2007年 日本弁護士連合会知的財産制度委員会(現知的財産センター)委員長
現 在 弁護士・弁理士
大阪公立大学法科大学院特任教授
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■書籍内容
第1編 序 論
第1章 不正競業の概念
第1節 営業の自由
Ⅰ 営業の自由
Ⅱ 営業の自由とその限界
第2節 競 業
Ⅰ 競 争
Ⅱ 競 業
第3節 不 正 競 業
Ⅰ 競業における不正
Ⅱ 不正競業
1 不正競争とパッシング・オフ
2 不正競争と不公正取引方法
3 不正競業
Ⅲ 不正競業行為の類型
1 不正競業行為の種類
2 不正競業の行為類型
第2章 不正競業法の成立と発展
第1節 不正競業法の沿革
Ⅰ 前 史
Ⅱ フランス
Ⅲ イギリス
Ⅳ アメリカ
Ⅴ ド イ ツ
第2節 わが国の不正競業法の沿革
Ⅰ 前 史
Ⅱ 不正競争防止法の制定まで0
Ⅲ 不正競争防止法の制定
Ⅳ 不正競争防止法の改正
Ⅴ 不正競業法の発展動向
第3章 不正競争防止法の概念
第1節 不正競争防止法の概念
Ⅰ 実質的意味における不正競争防止法
Ⅱ 形式的意味における不正競争防止法
第2節 不正競争防止法の性格
第4章 不正競争防止法の地位
第1節 不正競争防止法の社会的意義
第2節 不正競争防止法の法律的地位
Ⅰ 不正競争防止法と不法行為法
1 権利侵害論と違法性論
2 不正競争防止法と不法行為法
⑴ 両者の関係 ⑵ 非営利事業名称の冒用
⑶ ノウハウ侵害 ⑷ 隷属的模倣 ⑸ 著名商品等表示の冒用
⑹ マーチャンダイジング問題
Ⅱ 不正競争防止法と商標法
1 不正競争防止法と商標法の各制度目的
2 不正競争防止法による規制と商標法による規制の対比
3 不正競争防止法と商標法の相互関連関係
4 不正競争防止法の権利行使と商標権
Ⅲ 不正競争防止法と独占禁止法
1 独占禁止法と不公正な取引方法
2 不正競争と不公正な取引方法
3 不正競争防止法と独占禁止法の関係
Ⅳ 不正競争防止法と創作権法
1 不正競業法と特許法
2 工業所有権保護と不正競争防止法による保護の重複
3 不正競争防止法と未特許の商品形態などの保護
⑴ はじめに ⑵ 周知商品等表示としての形態問題についての要約
4 不正競争防止法と著作権法
5 不正競争防止法とノウハウ及びトレード・シークレット
⑴ ノウハウ ⑵ 不正競争防止法によらないノウハウないし営業秘密の法的保護
⑶ 営業秘密保護と刑事規制
第2編 不正競争行為
第1章 序 説
第1節 不正競争防止法の構成
第2節 不正競争防止法に定められた不正競争行為類型
Ⅰ 何人の利益を害するかという観点から
Ⅱ 内容の観点から
Ⅲ その他の観点から
第2章 周知商品等表示混同行為(2条1項1号)
第1節 総 説
Ⅰ 保護対象──周知商品等表示
Ⅱ 周知商品表示混同行為
Ⅲ 周知営業表示混同行為
第2節 商 品 表 示
Ⅰ 商品の概念
Ⅱ 表示の概念
1 識 別 性
⑴ 名 称 ⑵ キャラクター
2 識別性のない表示
3 識別性と類似性
4 使用による識別性
Ⅲ 表示としての商品の形態
1 意 義
2 裁判例の動向
⑴ 商品形態の商品表示性を否定した初期の判例
⑵ 旧不正競争防止法の下における商品等表示性の認容例
⑶ 旧不正競争防止法の下における商品等表示性の否定例
(商品等表示性を妨げる事情)⑷ 平成5年改正後の判例の動向
⑸ 判決例が定立した商品形態の「商品等表示」該当性判断の基準
⑹ 二次的出所表示機能の取得を妨げる事情 ⑺ 識別力が弱い商品形態
⑻ 不法行為法による規制
Ⅳ 商品の技術的機能と商品等表示性
1 問題の所在
2 判例の動向
3 技術的機能論の再検討
4 競争上似ざるを得ない形態の除外
Ⅴ 商品等表示の拡大
1 映像・キャラクター
2 容器・包装
3 複合的要素の結合から成る商品等表示
4 書籍の題号
5 スローガン・キャッチフレーズ
6 検索連動広告と商品等表示の使用
第3節 営 業 表 示
Ⅰ 営業表示の意義
1 表 示
2 フランチャイズ・特約店
3 商標の商号化
Ⅱ 営業表示としてのサービス・マーク(役務商標
Ⅲ ドメイン名・URLと商品表示又は営業表示
Ⅳ その他の営業表示
Ⅴ 営 業
1 営業の意義
2 音曲,拳法,舞踊などの流派
3 宗教団体
4 その他の公益的組織
5 企業グループ・団体
6 団体・企業グループの分裂
Ⅵ 店舗外観・商品の陳列方法
第4節 周 知 性
Ⅰ 周知性の意義
Ⅱ 周知性の内容
1 周知性の地理的範囲
2 周知性(広く認識されている)の要件
3 周知性の地域的範囲
Ⅲ 周知性の認定
1 認定の対象
2 取引者又は消費者の範囲
3 周知の程度と認識の浸透度
4 周知性の認定時期
5 周知性の承継
6 周知性の獲得の過程における知的財産権の権利行使
第5節 混 同 行 為
Ⅰ 混同の意義
Ⅱ 混同の具体性の意味
Ⅲ 混同の構造
1 混同の種類
2 狭義の混同と広義の混同
(194)
4 混同と混同のおそれ
Ⅳ 表示の類似
1 はじめに
2 混同と類似の関係
3 表示の類否の判断
⑴ 不正競争防止法の類似と商標法の類似 ⑵ 類否判断方法 ⑶ 類似否定例
⑷ 店舗外観その他複合的要素からなる表示に関する類似判断
⑸ 結合表示等につき類似性が否定された例
⑹ 類似肯定例
4 表示の使用
⑴ 商品についての表示の使用 ⑵ 営業における表示の使用
Ⅴ 周知営業表示混同行為における混同の概念
1 営業表示に関する広義の混同(220)
2 混同に関する判例
3 商号の類似と混同
4 広義の混同と表示の著名性(227)
5 混同のおそれを否定する事情
Ⅵ 混同をめぐるその余の問題
1 逆 混 同
2 購入後の混同
第3章 著名商品等表示冒用行為(2条1項2号)
第1節 総 説
Ⅰ 2条1項2号の意義
Ⅱ 2条1項1号との相違点第2節 著名商品等表示冒用行為の成立
1 広義の混同
2 広義の混同理論の限界
3 平成5年改正前の著名表示保護に対する認識
Ⅱ 問題点とその解決
第3節 著名商品等表示冒用行為の要件
Ⅰ 著名商品等表示
1 著 名 性
⑴ 著名性の地域的範囲 ⑵ 著名性認定の対象と程度
⑶ 不正競争防止法2条1項2号の著名性と商標法の周知・著名
⑷ 不正競争防止法2条1項2号の著名性と立法趣旨
⑸ 表示の混同・ただ乗り・希釈化・汚染の相違
2 商品等表示
Ⅱ 表示の類似
1 趣 旨
2 他の類否判断との相違
3 類否判断の方法
4 類似と原表示認識との関係
第4節 請 求 権 者
第4章 商品形態模倣行為(2条1項3号)
第1節 総 説
Ⅰ 2条1項3号の意義
Ⅱ 商品形態模倣規制の趣旨
第2節 商品形態の模倣に対する従来の規制
Ⅰ わが国における規制
1 不正競争防止法による規制
2 意匠法による規制
3 著作権法による規制
4 不法行為法による規制
Ⅱ 主要国の法制
Ⅲ 規制の方法
第3節 商品形態模倣行為の要件
Ⅰ 旧3号の規定
Ⅱ 旧3号の要旨
Ⅲ 2条1項3号の対象とする行為
Ⅳ 2条1項3号における「商品」の意義
Ⅴ デジタル時代における「商品」の概念
Ⅵ 形態の模倣
1 2条1項3号による模倣規制の趣旨
2 商品の形態
⑴ 保護の対象となる商品形態 ⑵ 外国商品
⑶ 「形態」の意義 ⑷ 商品の形態をめぐるその他の問題点
Ⅶ 模 倣
1 模倣の概念
2 模倣の要件
3 主観面の問題(依拠性)
4 客観面の問題(実質的同一性)
Ⅷ 当該商品の機能を確保するために不可欠な形態
1 趣旨・沿革
2 旧3号の除外規定である「同種の商品が通常有する形態」について
3 「同種の商品が通常有する形態」に関する学説及び判例
⑴ 学 説 ⑵ 判 例
4 平成17年改正後の2条1項3号における「当該商品の機能を確保する
ために不可欠な形態」の意義
5 類似商品の通常有する形態
第4節 2条1項3号の規制期間の制限
Ⅰ 保護期間の制限の趣旨
Ⅱ 保護期間の開始及び終了
1 「最初に販売された日から起算して3年」の意味
2 「日本国内において最初に販売された日」を起算点とすることの意義
3 保護期間経過後における他の規定による保護
Ⅲ 起算日の主張及び立証
第5節 競業上の良俗に反しない商品形態の模倣
Ⅰ 模倣商品の善意取得者の保護
Ⅱ 旧3号の製作上回避不可能な形態や商品の本来的性格に伴う形態
第6節 2条1項3号違反の行為に対する差止請求・損害賠償請求等の
主体となりうる者
Ⅰ 商品の開発を行った者
Ⅱ 独占的販売業者
Ⅲ 他人の商品形態の模倣者
第5章 営業秘密に係る不正行為(2条1項4号〜10号)
第1節 総 説
第2節 営 業 秘 密
Ⅰ 秘密の意義
Ⅱ 不正競争防止法における営業秘密の意義
Ⅲ 秘密管理性
1 管理要件の必要性
2 秘密管理の内容
3 「秘密管理性」をめぐる判例
⑴ 秘密の特定と明示(当該情報にアクセスした者に当該情報が営業
秘密であることを認識できるようにしていること)
⑵ 当該情報にアクセスできる者が制限されていること(339)
4 経済産業省による「営業秘密管理指針」の公表(347)
Ⅳ 生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報
1 「技術上又は営業上の情報」
⑴ はじめに ⑵ 技術上の情報 ⑶ 営業上の情報 ⑷ 営業秘密とノウハウ
2 事業活動に有用なる情報
Ⅴ 公然と知られていないもの
1 相対的秘密
2 公知と開示
Ⅵ 営業秘密に関するその余の問題点
1 秘密として保護されるに値する利益
2 一般的知識・情報に関する問題
Ⅶ 保有する事業者(保有者)
第3節 営業秘密に係る不正競争行為
Ⅰ 不正取得秘密の取得・使用・開示行為(2条1項4号)
1 意 義(367)
2 その他の不正手段
3 使用と開示
4 2条1項4号の差止請求
Ⅱ 不正取得秘密の悪意転得者による取得・使用・開示行為(2条1項5号)
Ⅲ 不正取得秘密の事後的悪意転得者による使用・開示行為(2条1項6号)
Ⅳ 保有営業秘密の不正使用・開示行為(2条1項7号)
1 意 義
2 保有者より示された営業秘密
3 従業者が職務上知得した営業秘密
4 不正利益を図る行為・損害を加える目的)
5 行 為 者
6 使用と開示
Ⅴ 不正開示秘密の悪意転得者による取得・使用・開示行為(2条1項8号)
Ⅵ 不正開示秘密の事後的悪意転得者による使用・開示行為(2条1項9号)
Ⅶ 技術上の営業秘密に関する不正使用行為によって生じた物の譲渡等行為
(2条1項10号)
Ⅷ 技術上の営業秘密の使用による生産等の推定(5条の2)
1 5条の2の趣旨
2 令和5年不正競争防止法改正による適用対象の拡大
3 技術上の秘密の意義
4 前提となる行為態様と推定の範囲)
⑴ 2条1項4号,5号,8号に該当する不正競争行為について
⑵ 2条1項7号に該当する不正競争行為について(393)
⑶ 2条1項6号及び9号に該当する不正競争行為について)
判例索引(上巻)
事項索引(上巻)